インフレ ターゲット

国債金利・預金封鎖・経済政策


財政 危機
政府の借金ゼロ
信用 創造
バブル経済
GDP
税の源泉

デフレからの脱却
日銀による意図的デフレ
オズの魔法使い
金貨供給量・金本位制
BIT COIN
CRYPTO CURRENCY

インフレ ターゲット

デフレ状態において、インフレターゲットを持ち出すことは必ずしも間違いではありません。

しかし、現在の日本の財政事情を考えた場合得策ではないと思われます。

日銀もそれを分かっているでしょうから、インフレターゲットをやるとは言い出しません。

日銀がインフレターゲットを言い出した途端に、本当に金利は上がります。

そうなれば、金融市場が大混乱となる可能性があるからです。

財政が健全な国なら、インフレターゲットを導入すべきでしょう。

今の日本で導入すれば、さらに、財政が悪化することは目に見えています。

インフレターゲットを導入して景気が良くなれば、財政も健全化しやすくなるという意見があります。

日本の財政はインフレターゲットを導入できるようなレベルをとうに超えた危険水域にあるのではないでしょうか。

インフレになった時、財政赤字はどうなるでしょうか。

日本国全体で、短期と長期を合わせて
1000兆円に迫る負債残高があります。

これだけの負債を抱えた日本が、諸外国と同様にインフレターゲット政策を採用すればどういうことが起こるでしょうか。

期待インフレ率が上昇しますから、発行する国債金利もその分上昇します。

ターゲットにしているインフレ率より低く国債金利を設定すると、誰も購入しようとする人はいないでしょう。

政府が本気でインフレターゲットを導入すると、国債金利がその分上昇する可能性があります。

金利が
2%高くなると、日本政府には約1000兆円の負債残高がありますから、利払いは年20兆円程度増えることになります。

現在、国債の金利支払いは年
10兆円程度です、これが年に30兆円となるのです。

今年(
2011年)の税収は予算ベースで37兆円程度です。

このままの財政状態で、もしインフレターゲットを導入して期待インフレ率が上がり金利が
2%上昇したら、利払いだけで税収の8割近くを持っていかれてしまうことになります。

インフレターゲットを導入してインフレになり金利が上がった場合、これまでに発行されている既発債の価格が値下がりします。

インフレになって、もし世間の長期金利が
3.5%に上がったならば、新発の国債は3.5%の金利をつけないと発行できません。

そのため、既発債の取引価格が下がります。

インフレターゲットで期待インフレ率が上がると、国債の価格が一気に下がります。

そうすると大量の国債を保有している銀行は、大きな含み損を抱えることになります。

累積赤字のかなりの部分(
2010年3月末で684兆円)が国債です。

この
国債の95.4%(652兆円)は国内で消費されています。

外国人投資家が買っているものは
5%弱です。

日本人の多くは、自分が国債を買っている自覚がないまま、預貯金という形で国債購入の資金を提供しているのです。

一般の都市銀行は資産の約
20%を、ゆうちょ銀行は約80%を国債を購入しています。

銀行にとって国債は簡単で確実に儲かる商品なのです。

普通預金(金利は約
0.04%)で調達した資金で日本国国債を購入し10年間満期まで持てば、金利の変動リスクはあるものの1%ぐらいは今のところほぼ確実に儲かるのです。

新しい国際会計基準(
IFRS)では「包括利益」という概念があります。

これは、純利益とは別に「持っている資産や負債を時価評価して、評価された負債と資産の差額を純資産に反映する」という会計の考え方です。

国債の価格が大きく下がると、この包括利益の面でも大きな影響を及ぼすことになります。

銀行の「自己資本比率の規制」が問題になります。

5年後、日本は大きな危機を迎える

日本の最大の貿易相手国、中国の成長の鈍化が5年以内に起こること。

2012年問題と言われる団塊の世代の大量退職で、貯蓄率がさらに低下すること。

ゆうちょ銀行が今と同じペースで国債を買えるのも、預入額を倍増したとしても、あと5年だということ。

日本経済復活のための処方箋

1. 財政健全化のためのコストカットと消費税の増税

2. 移民の積極的受け入れと徹底した少子化対策による人口ピラミッドの健全化

3. 日本の得意分野を成長させる教育制度の導入

4. 地域活性化と沖縄基地問題を一気に解決する防衛力増強

5. エコ活動強化で貿易黒字の確保


日本経済このままでは預金封鎖になってしまう 小宮一慶 ディスカバー・トゥエンティワン刊 2010-10-15


[日本の政策金利「コールレート翌日物」]


1994年9月まで、日本の政策金利と言えば公定歩合でした。

公定歩合というのは、銀行が日銀からお金を借りるときの金利のことで、英語では
Official Discount Rateと言います。

しかし、
1994年10月に民間銀行の金利が完全に自由化され、公定歩合で金利を操作することが難しくなりました。

公定歩合を操作する代わりに、現在では短期金融市場の金利を政策金利として操作するようになっています。

日経新聞の景気指標の「新発
10年国債利回り」の左隣に「コールレート翌日物」と書いてありますが、これが現在の日本の政策金利「コール翌日物」の金利です。

「コール」というのは、銀行間でお金を貸し借りする市場のことです。

銀行によってお金が足りないところ、多いところがありますから、それを調整する市場があるのです。

コール市場で、貸し借りの期間が一番短いのが「半日物」と呼ばれるものです。

銀行間で半日だけお金を貸し借りするというのが一番短期の取引です。

その次に短いのが、日本の政策金利でもある「翌日物」です。

英語では「オーバーナイト」とも言います。「1日だけ、お金貸してください.。明日、返しますから」という場合の金利です。

この「コールレート翌日物」を、日本では政策金利としています。

[現在の公定歩合「補完的貸付金利」]

公定歩合がなくなったからといって、現在は日銀が銀行にお金を貸すことがなくなったか、というとそうではありません。

銀行がお金に困ったときに、お金を借りる「コール市場」というのは、無担保での銀行同士の相対取引が原則です。

ですから、お金を借りたがっているD銀行の財務内容が非常に悪ければ、C銀行は貸さない、ということもありえます。

短期的にでもお金を取れなければD銀行は破綻することになりますから、何とかお金を作るしかありません。

今、日本の銀行は各行大量の国債を持っています。

その手持ちの国債を資金繰りのために、一気に市中で売却するようなことになったら、国債は暴落する可能性があります。

それがもしメガバンクなら大パニックです。

そうした事態を防ぐために、銀行は手持ちの国債などを担保に、日銀からお金を借りることができるという制度があります。

この金利を
「補完的貸付金利」と呼んでいて、これが昔の公定歩合です。

ヨーロッパにはロンバート貸付という制度があるのですが、それにならった制度です。

ただ、もう政策金利としての意味はほとんどなくなっていて、コールレート翌日物が主な役割を果たしています。


[政策金利は日銀が市場介入して決めている]

今の日本の金利政策とは、「コールレート翌H物」を限りなく
0.1%に近づけるというものです。

日経景気指標の短期金利は、このところずっと
0.1%前後です。

どうやって、この金利を
0.1%前後に保つことができたのでしょう。

金利は、日銀が「
0.1%に決めました」と宣言すれば、それで決まるというものではありません。

金利というのは、資金の貸し借りの需給のバランスの中で決まるものだからです。

つまり、お金を借りたい人が増えれば、当然のことながら金利は上がります。

逆に、お金を貸したいという人が増えれば金利は下がります。

このようなメカニズムで動く市場に対して、日銀が市場介入して調整しているわけです。

「コールレート翌日物」をコントロールするための具体的な日銀の動きとは以下のようなものです。

お金を借りたい人が増えて、市場に資金が足りなくなると日銀が資金を供給します。

反対に、お金を貸したい人が増えて市場に資金が余っているときには、日銀が質金を吸収します。

こういった方法で、日銀は金利を日々誘導しています。

以前、もっと景気が悪かったとき、日本が「ゼロ金利政策」をとっていました。

これは「コールレート翌日物」を限りなくゼロに近づける、という政策のことです。

つまり銀行がお金を借りたいというときには、金利ゼロで貸し出して、資金をジャブジャブにつけていたのです。

2007年当時は0.5%まで政策金利を上げていました。

この当時は、やや景気が戻っていた時期でした。不景気の今は政策金利を
0.1%にしています。

[なぜ10年国債の利回りは米国の方が高いのか]

米国の政策金利は、フェッドファンド(Fed Fund)金利と言います。

日本の政策金利とまったく同じく、銀行問で1日だけ貸し借りする短期市場での金利のことです。

今、米国はこのフェッドファンド金利を
0〜0.25%に誘導しています。

実質的には米国も、政策金利を日本と同じ
0.1%程度に誘導しているのです。

日経景気指標には、このフェッドファンド金利は載っていませんが3ヵ月ものの短期国債「
TB3ヵ月」の金利が載っています。

TBというのは、Treasury Billの頭文字で、「財務省証券」と訳される「3ヵ月ものの短期国債」のことです。

日経新聞では米国の短期金利の指標として、この数字を出しています。

2010年8月現在のTB3ヵ月は0.14%と出ています。

つまり、今現在の短期金利は、日本も米国もほぼ同じ
0.1%程度です。

日本と米国の短期金利はほぼ同じです。

これは重要なポイントです。


10年国債の金利を見てみましょう。

日経景気指標では先ほどの米国短期国債金利「
TB3ヵ月」の右側に「10年国債利回り」と出ています。

これを見ると、
2010年8月の金利は2.47%です。

次に日本の数字を見てみましょう。

こちらも先ほどの短期金利「コールレート翌日物」の右側に「新発10年国債利回り」の欄があります。

2010年8月現在で0.975%です。

日本も米国も短期金利は約0.1%と同じなのに、10年国債は米国2.47%に対して、日本は0.975%と大きく差がついています。

これはなぜでしょうか。

短期金利は日米ほぼ同じにコントロールしているのに、なぜ10年国債利回りは違ってしまうのか、その理由を考えてみてください。

これは不思議に感じられるのではないでしょうか。

短期金利はまったく同じなのに、長期金利が違うのはなぜでしょう。

[よりハイリスクな日本国債の金利がなぜ低いのか]

格付け機関ムーディーズによる米国の格付けは
Aaa、これは最上位の格付けです。

つまり米国は最も信用力が高く、リスクが低いとされているのです。

日本の格付けは
Aa2です。

Aaaの下がAal、その下がAa2ですから、日本は米国よりも2段階下の格付けです。

言い換えれば、日本の方が米国より信用力が低くリスクが高い、ということです。

先ほどの金利と合わせて考えると、これは不思議な現象です。

つまり「リスクが高いものほど金利が高くなる」というのが金融の世界の常識だからです。

仮に、超優良企業のA社と密かに倒産が噂されるB社が社債を発行したとします。

もし両方の金利が同じだとしたら、誰もB社の社債は買いません。

B社が社債を売るためには、上乗せ金利(リスク・プレミアム)が必要となります。

こうしてリスクが高いと金利は高くなるのです。

これがファイナンスの世界の常識です。

しかし不思議なことに国債は違うのです。

日本と米国の金利

日本は米国よりも格付けが低い、つまり日本の方はリスクが高いとされているので、常識的には金利は高くなるはずです。

しかし、現実には日本の方が金利は低い。

日米とも政府は短期金利を
0.1%にコントロールしているわけですから、スタート地点は同じです。

2007年の米国-短期金利(TB3ヵ月)3.16% 10年国債利回り4.02%

日本-短期金利(コールレート翌日物
0.504% 新発10年国債利回り1.275%

このときは米国の短期金利が
2%以上高かったので、「10年国債」の金利も米国の方が3%高くても納得できるように思えます。

しかし最近では、日米の政策金利はほぼ同じです。

それなのに、なぜ米国の長期金利が高いのでしょうか。

[長期金利は期待インフレ率と連動する]

短期金利は同じなのに長期金利が違う理由、その答えのひとつは物価にあります。

まずは、米国の消費者物価指数は、前年比が
2007年でプラス2.8%、08年で3.8%となっています。

これはつまり前年度と比べて、それだけ物価が上がってインフレとなっているということです。

米国は、このところ長期的に見てインフレ率が
3%前後となっています。

次に日本の消費者物価指数です。

前年比で
2007年プラス0.3%、08年1.2%です。

そして
09年度はマイナス1.6%です。

政策金利など短期金利以外にもうひとつ、長期金利を決める要素に「期待インフレ率」つまり消費者物価指数がこれからどの程度長期間にわたって上がるのかということがあります。

例えば、この先も米国のインフレは年3%で続くだろうと予測しているとします。

これはつまり、今年
100ドルでモノを買えば、そのモノの値段は1年後には103ドルになるだろう、ということです。

そのときに
2.5%で国債を発行しても誰も買いません。

なぜならば、モノを
100ドルで買えば1年後には103ドルになるのに、国債を持っていても102.5ドルにしかならないので損をしてしまうからです。

それなら今、(借金してでも)モノを買った方が得です。

日本の場合は、だいたい年1%前後の消費者物価の上昇ですから、そうすると長期金利も
1%を超えていればOKなのです。

特に今はデフレです。

2009年度はマイナス1.6%ですから、100円のモノが来年98.4円に下がるということです。

その分お金で持っていれば、実質的には
1.6%金利がついたと同じことになります。

ですから今の日本は、デフレと表面金利を合わせて実質金利は
2%程度と案外高いのです。

それに対して、米国債は
3%以上の利率で、米国の期待インフレ率は2%台です。

だから、短期金利はまったくと言っていいほど同じで、さらに格付けの高い米国債の利回りが高いということなのです。

日本と米国の間での為替リスク

米国債の約半分は海外投資家が買っていますが、彼らは為替リスクを取っています。

インフレリスクに加えて為替リスクもあるわけですから、その分、期待利回りが高くなる傾向があります。

一方、日本国債はその95%が国内で消化されているのです。

国内の投資家から見れば為替リスクはゼロです。

その分、金利を低く抑えることができるのです。

さらに言えば、短期金利を低く抑えておけば、投資家は調達金利を低く抑えることができます。

国債で運用している限りは、価格変動リスクはあるものの、経済情勢さえそれほど変わらなければ、国内の銀行は為替リスクもありませんから、ある程度確実に儲けることができる仕組みになっているとも言えます。

しかし、経済情勢が大きく変わるか、国内だけで国債の消化ができなくなったときにシナリオは大きく変わります。

もう少し正確には、国債を国内だけで消化できなくなったときに、経済情勢が大きく変わりやすくなる、と言った方がよいかもしれません。

ここでひとつ重要なことは、日本国債も国内だけで消化できる比率が下がると、今より金利を上げなければならなくなる、ということです。

このことは利払いを増やしますから、さらに財政を悪化させることになります。

 日本経済このままでは預金封鎖になってしまう 小宮一慶 ディスカバー・トゥエンティワン刊(2010-10-15


日本経済 このままでは預金封鎖になってしまう






中国、外貨準備3兆ドル突破 3月末、為替介入で24%

【北京=高橋哲史】中国人民銀行(中央銀行は
14日、3月末の外貨準備高が前年同期比24.4%増の3兆447億ドルになり、初めて3兆ドルを突破したと発表した。

人民元相場の上昇を抑えるために元を売ってドルなどを買う市場介入を繰り返した結果、手持ちの外貨が膨らんだ。

14日にワシントンで開幕する20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、人民元問題が改めて争点になりそうだ。 
中国の外貨準備高は
2006年2月に日本を抜いて世界一になった。

その後も拡大を続け、
09年4月末に2兆ドルを突破。

今年3月末時点では2位の日本(
1兆1160億ドル)の倍近い水準に達している。 

中国の外貨準備高の拡大が止まらないのは、人民銀が元相場を実勢より低く保つために
大規模な為替介入を実施しているためだ。

特に米国が昨年秋に量的緩和策の第2弾
(QE2)に踏み出して以降、世界的にだぶついたマネーが利上げを続ける中国に流れ込み、人民銀は介入の拡大を余儀なくされている。 

中国の貿易収支は、今年
1〜3月に輸入の拡大で7年ぶりの赤字となったが、外貨準備の増勢に歯止めはかかっていない。 

人民銀が為替介入を通じて市場に吐き出した人民元はカネ余りを生み、物価や不動産価格を押し上げる要因にもなっている。

温家宝首相は
13日に「元相場の弾力性を高め、インフレの条件を取り除く」と述べた。

人民銀は為替介入を減らし、元高を容認する時機を探っているとみられる。

2011-04-15(金)日本経済新聞-朝刊 


中国の成長鈍化と日本への影響


[変動相場への移行で中国の成長は鈍化する]

近い将来、中国は人民元を切り上げざるを得ないでしょう。

当面は5%くらいと言われていますが、それだけでは済まないはずです。

数年内には数割切り上げるか、場合によっては
WTOに提訴されて、為替がフロート(つまり実質的に変動相場〕に移行する可能性も高いでしょう。

そうしたときに何が起こるでしょうか。それは中国の成長の鈍化です。

日本もかつては、
1ドル360円の固定相場のもとで高度成長を実現しました。

その後、日本はドイツを抜いて世界第2位の経済大国になりました。

その経済大国が世界中に貿易赤字をまき散らかすのは許せないと、日米の貿易不均衡が問題になって、
1971年のニクソンショック以降、1ドル308円に切り上げられたのです。

それでも貿易不均衡が起こることから、日本は変動相場制に移行したのです。

しかし、それ以降の日本は成長率が鈍化することになりました。

日本と同様に、経済大国になった中国も変動相場制か、それに近い為替制度に移行せざるを得ないはずです。

しかし、それは中国の成長を鈍化させることになります。

今、日本の最大の輸出国は中国です。

輸出の約
20%が対中国なのです。

中国の成長鈍化は、日本の成長にも影響することは間違いありません。

輸出だけでなく、中国で稼いでいる日本企業もすくなくありません。

おそらく、この”人民元の実質的な自由化”これが5年以内に起こるのではないかという仮説を私は持っています。

日本経済このままでは預金封鎖になってしまう 小宮一慶 ディスカバー・トゥエンティワン刊より




経済政策


1.「構造改革派」、「新自由主義」あるいは「市場原理主義」とも呼ばれます。

供給側である民間企業に課せられている規制を極力緩和し、生産性を高めていけば経済は成長する、という立場です。

わかりやすく、言えば、いわゆる「小泉-竹中路線」ということになる。

構造改革のコンセプトそのものを、小泉純一郎元首相や竹中平蔵氏が自ら編みだしたわけではありません。

本家本元はアメリカですが、実は
1970年代までは存在していませんでした。

80年代に「新自由主義」として台頭し、アメリカからイギリスに伝播し、「土光臨調」として日本でも受け入れられ始め、「小泉-竹中路線」という形で定着したものです。

現在、議論が盛んな
TPP(環太平洋経済連携協定)を推進している人々も、完全にこの範疇です。

2.「財政健全化至上主義」、国の財政再建を至上命題とするグループ。

これは日本では構造改革派並に「歴史と伝統」を有しており、かれこれ
30年以上続いています。

その中核は財務省、
1982年、日本政府は戦後はじめていわゆる赤字国債の借り換え債を発行しました。

それまでは、赤字国債は
10年で返済する予定でしたが、それが不可能になり、借り換え債を発行することにしました。

時の首相は鈴木善幸氏。

当時の大蔵省は大騒ぎし、マスコミを焚きつけて「日本財政、サラ金地獄に」などという大見出しを掲げさせました。

鈴木首相は、
1984年までに赤字国債依存から脱却することを円標としていたものの、結局達成できる見込みが立てられず、退陣に追い込まれてしまいました。

また、バブル崩壊後の
199511月、当時の武村正義大蔵大臣は、国会で翌年度予算は10兆円を超える規模での歳人不足となり、赤字国債の発行が避けられないという「財政危機宣言」を行った。

これが後の消費税率アップ(
1997年)につながりました。

こうした路線はいまも脈々と生き続け、
20111月、菅第二次改造内閣で入閣の消費税増税論者の与謝野馨経済財政担当大臣は、現時点におけるこのグループの象徴的な存在と言えます。

3.「リフレ派」(リフレーション デフレを脱し、インフレになる前の状態)と呼ばれているグループ。

単純化して言えば、金融緩和を拡大していけば景気が回復し、設備の過剰や失業問題、さらにはデフレからも脱却できるという立場です。

ひたすら日銀に圧力をかけて金融を緩和する、つまり通貨の供給量を増やしさえすれば良いというのが、基本的なスタイルです。

経済成長によって問題を解決しようとする考え方は次の「財政拡大主義」と似ていますが、財政支出にはあまり積極的ではありません。

政府に支出を増大させても、「無駄使い」をするだけと考えている人が多いのです。

4.「財政拡大主義」

金融緩和をすると同時に、政府が公共投資などで支出を増やし、日本経済の規模を拡大させることでデフレを脱却しようとする立場です。

政治家で言えば麻生太郎元首相や亀井静香国民新党代表、エコノミストや評論家では、紺谷典子氏やリチャード・クー氏、植草一秀氏などがここに位置しています。

間題をより複雑にしているのは、この四つのグループに分類できない勢力が、意外にも多いことです。

勘違いや理解力の低さからか、矛盾した政策を主張しています。

例えば、デフレ脱却、リフレ政策を主張しながら、同時に財政健全化や構造改革も唱えている人達です。

いまの日本の問題はデフレだという主張は正しいのですが、一方でデフレを悪化させる可能性が高い、構造改革路線の
TPPを支持していたりします。


財政拡大主義

財政拡大主義の典型的な政治家といえば、在任当時「今太閤」と呼ばれた田中角栄元首相が思い起こされます。

田中角栄は著書『日本列島改造論』でも知られるとおり、全国を高速道路や新幹線で結合し、地方に拠点となる都市や工業地帯を建設して、過疎や公害といった問題からの脱却を図ろうとしました。

問題なのは、田中角栄が首相に就任した当時は、日本がインフレだったということです。

インフレ下にもかかわらず、公共投資を拡大した結果、最終的には物価の狂乱を招いてしまったのです。

確かに経済は拡大したのですが、残念ながら当時の問題認識と解決方法としては間違っていたということになります。

当時の田中角栄が本来やらなければならなかったのは、それこそ増税であり、公共投資の削減だったのです。

すなわち、財政健全化です。


構造改革

特にバブル崩壊後アメリ力からの提案という名の圧力にも後押しされて、構造改革や金融の自由化が進みました。

「改革なくして成長なし」というフレーズは、
2002年以降の長期にわたる経済成長で、多くの人々の頭の中に浸透しました。

いまになってデータに基づき分析すれば、当時の成長は外需中心によるもので、その根源はアメリ力の不動産バブルだったことがわかります。

別に、構造改革が功を奏したわけではないのです。

それがわかっているのに、なぜいまでも構造改革路線に固執しようとする人がいるのだろうか。

規制緩和、自由化一辺倒の構造改革路線は、現在のデフレ下では日本経済を悪くしているとしか思えません。

公共投資を積極的に行い、競合企業が談合をやり、金融は国内で閉じこもり、公定歩合で日銀が窓口融資をしていた時代のほうが、事実として日本はむしろ経済成長していました。

美しいイメージをもって語られるフレーズに、「規制緩和」や「生産性向上」があります。

だが、これらもインフレ対策にほかならず、デフレ対策にはならないのです。

規制緩和とは、例えば政府によってガチガチに手足を縛られ、まともに生産をしていない国営企業を解体、あるいは民営化し、法令による規制も緩和して、自由に民間が参入できるようにすることです。

これは、見方を変えれば民間の活力を入れることによって供給能力、生産力を高めることにほかなりません。

ところがいまの日本はデフレなのだから、需要がなく、供給が余っている。

そこに、規制緩和でさらに供給能力を高めてどうするのか、という話になります。

生産性向上も全く同様です。

生産性が上がったことによって、例えばそれまで100人でつくっていたものが、90人でつくれるようになったとしよう。

経済がインフレの状況ならば、不要になった10人は別の仕事に就けるだろうが、供給過多のデフレ下では、ほぼ間違いなく失職する。

つまり失業者を生み出すだけです。

インフレ経済学が有効だった典型例は、ラテンアメリカ、特にブラジルです。

80年代までのブラジルは、まるで旧ソ連のように国営企業ばかりで、従業員も一生懸命働きませんでした。

供給能力は増えないにもかかわらず、需要ばかり増えていくために、大変なインフレを招いてしまったのです。

その対策として、ブラジル政府は、規制緩和や国営企業の民営化を行い、さらにブラジルを「開国」して外資を積極的に招き入れて、国内の供給能力を増やしたのです。

結果、インフレは抑制され、現在の繁栄に結びついたことになります。

「構造改革主義者」たちは、供給側しか見ないのです。

とにかく規制緩和をすれば供給が高まり、需要も生まれる、という解決策一辺倒なのです。

供給過多によって需要がないことが問題なのに、「そうではない、供給を高めれば需要が生まれるはずだ」と主張し続けているのです。

供給が高まれば需要が生まれるという図式そのものを、頭から否定するつもりはないが、現実として現在の日本には需要と供給との間に大きなギャップがあります。

まずは、それを埋めることのほうが先なのではないでしょうか。

物事の順番を守ろうという話です。

需要を増やしすぎてインフレを招いたら、そこから規制緩和や生産性向上に取り組めばいいのです。

そのときは、構造改革大いに結構。

どんどん供給能力を高めて、日本経済を成長させればいいのです。


財政健全化

財務省は、「このままでは財政破綻する、財政健全化を最優先しなければならない」などと世論を煽りまくり、政府の手足を縛っています。

財政健全化というのは、すっかり浸透した言葉です。

具体的には、公共投資などの政府支出の削減や増税を通じ、財政取支の均衡や政府の債務を圧縮することを指します。

だが、これはあくまで
「インフレ対策」なのです。

インフレの際に増税し、個人消費を抑え、あるいは公共投資を削って政府の支出を抑制することは、当然求められるべき政策です。

しかし、それをデフレ期のいま行ってどうしようというのだろうか。

日本をますますデフレにしたいのだろうか。


橋本龍太郎元首相の後悔

財政健全化を目指すグループの「活躍」によって、現在の日本では着実に消費税率アッブやむなしという雰囲気づくりが進んでいます。

1997〜98年のころを思い出して欲しい。

97年に消費税率を3%から5%に上げ、その翌年に税収がどうなったのか。

数字を見れば明らかです。

国税庁のホームページに掲載されているので、ぜひ確認してみて欲しいのだが、消費税は確かに増えました。

しかし、法人税と所得税が減収になり、トータルでは税収が減ってしまった。

この種の数字を見た上で、それでも消費税を上げろと言っているのだろうか。

なぜ誰も、こういう声を上げないのだろうか。

税収が減るということは、とどのつまり財政が悪化するという話です。

日本はすでに、財政健全化目的で消費税率を上げると、却って財政が悪化するという経験をしています。

加えて、1997年の橋本内閣による緊縮財政でデフレが深刻化し、現在に至るまでの日本の社会の悪しき変化を引き起こしてしまったのです。

何が変わったかというと、平均給与の水準がジリジリと下がってしまった。

バブル崩壊後も一応右肩上がりを保っていたのだが、1997年をピークに平均給与が右肩下がりに転じたのです。

さらに失業率は上昇し、自殺者は1.5倍になってしまいました。

橋本元首相は、2001年の自民党総裁選挙において、以下のとおり語っています。

「振り返ると私が内閣総理大臣の職にありましたとき、財政の健全化を急ぐあまりに、財政再建のタイミングを早まったことが原因となって経済低迷をもたらしたことは、心からお詫びをいたします。

そして、このしばらくの期間に、私の仲のよかった友人の中にも、自分の経営していた企業が倒れ、姿を見せてくれなくなった友人も出ました。

予期しないリストラにあい、職を失った友人もあります。

こうしたことを考えるとき、もっと多くの方々がそういう苦しみをしておられる。

本当に心の中に痛みを感じます
(2001年4月13日)

しかし総裁選の結果はご存じのとおりで、圧勝のうえで小泉内閣が緊縮財政政策を続行しました。

「改革なくして成長なし」というフレーズを掲げて構造改革路線をひた走った小泉内閣だが、旺盛な外需に支えられ、2002年から06年にかけての長期経済成長に恵まれ、いまも多くの国民が小泉改革は正しかったと支持しています。

しかし2001年に小泉内閣が成立し、いきなり緊縮財政政策に舵を切ったとたん、名目GDPが翌年、マイナス成長に落ち込んでしまったというのが「事実」である。

結局、橋本内閣の失敗の轍を踏んだところに、
アメリカから不動産バブルの神風が吹いただけだったのです。

自民党は、過去に2度までも緊縮財政政策で日本経済をマイナス成長に叩き込むという失態を演じています。

その反省を踏まえて登場したのが、
積極財政を標榜した麻生内閣だったわけだが、折からの世界金融危機による強烈な景気後退にも阻まれて、結局、政権交代という結末になってしまった。

小泉内閣時代は緊縮財政を強行したにもかかわらず、
金融危機の元凶となった、アメリカの住宅バブルによって生み出された、かりそめの外需で成長していたのと対比して、何という皮肉だろうか。

とって代わった民主党政権は、残念ながら確実に橋本政権、小泉政権の後継者です。

何しろ現在の民主党政権は、両政権すべての要素を含んでいるのです。

TPPに代表されるアメリカ的構造改革を推進したがる人達、与謝野氏に代表される財政健全化を目指す緊縮財政グループ。

財政出動派はいません。

構造改革派と緊縮財政派のタッグだからこそ、民主党政権が打ち出すソリューションは、
TPPであり、消費税率引き上げなのです。

もはや説明は不要だろうが、両方ともデフレを悪化させるのは見え見えです。


「インフレ経済学」

「インフレ経済学」でデフレを語るな。

デフレ下でインフレ対策

こうした翻齢は、なぜ生まれるのだろうか。

少なくとも20世紀における世界経済の目標は、インフレに打ち克つことだった。

言い方を変えれば、モノ不足、生産不足への対処だったのです。

実は、インフレを解決し、回避する方法は山ほどあります。

世界経済は長い間インフレだったために、
経済学はインフレヘの対処を主な研究目標として発展してきたのです。

しかし、デフレを回避する方法というのは、残念ながらいまだ経済学的に成熟していません。

1930年代の世界大恐慌以外にあまり実例がなく、世界的に総じてインフレが続いていたため、研究する必要もあまりなかったためです。

1990年代以降の日本は、60年ぶりのデフレの実例と言えます。

その上、日本の経済学者は、アメリカの真似しかしない。

日本が置かれている状況を跡まえた学問の発展が起こりにくく、デフレに対処するための経済学は置き去りにされてきたのです。

結果、インフレ経済学による経済発展のソリューションを、正反対のデフレ状況にある現在の日本に無理やり当てはめ、状況を悪化させてしまっていることになります。

対デフレの解決策はいくらでもあるのです。

中国は、2009年、130兆円もの新規融資を銀行に行わせた。

アメリカも70兆円に上る量的緩和策を打ち出している。

日本もできることをすればいいのです。

それをしないのは、政府の怠慢にほかならない。

不動産バブルの崩壊で世界中に不況の嵐を招いた当のアメリカは、デフレに陥らないために財政出動と金融緩和を盛んに進めています。

減税の継続や量的緩和第2弾、いわゆる
QE2だ。

同じことを日本もやればいいのである。

それは日本にとって一石三鳥になる。

まずデフレから脱却できます。

さらに、円安を招くので輸出企業の競争力が増すことになります。

そして、税収が増え、最終的には名目
GDPが増えるために、財務省流にいえば「国の借金」も対GDP比で目減りし、財政健全化も達成できるのです。

これらのデフレ対策は至極当たり前の政策なのだ。

だからこそ、アメリカもやっているのです。

しかし、なぜか日本では誰も主張しない。

いや、正確には主張している人もいるのだが、あまり報道されない。

日本のマスコミも、無知や怠慢から誤解にまみれた情報を垂れ流し、官僚や学者が発表したものを正しいと信じ込み、大した検証もせず、人の目を引くセンセーショナルな見出しをつけることだけに躍起になっています。

そして、
マスコミによって生み出される情報の歪みは、何らかの意図を持って世論を誘導しようとする輩に利用され、知らず知らずのうちにモンスターのような世論に成長するのです。

気がつけば、誤った情報が、さも当たり前のような顔をして一人歩きしていくのです。

私(三橋貴明)が主張する一石三鳥の解決策

視点を変えてみよう。

TPPのような貿易自由化は、農産物に限らず、モノは生産性の高いところから輸入したほうが良いという考え方に基づいている。

生産性が高ければ、それだけ多くの製品を安くつくれるためです。

だが、よく考えてみて欲しい。

日本経済を蝕んでいる最大の問題はデフレです。

安いものがいま以上に流通するようになれば、デフレ圧力がますます強まるだけなのです。

日本国民は、本当にそれを望むのだろうか。

輸出企業の経営者や経済団体は、TPPに参加しなければ、日本企業は韓国企業との競争に敗れてしまうと主張しています。

だが、韓国企業に負けている本当の理由は、為替です。

すなわち、円安になればすべて解決できるのです。

そして円高の元凶はデフレなのだから、
TPPへの参加を四の五の議論している時間があるのなら、一刻も早くデフレからの脱却を図るべきなのである。

それにもかかわらず、鎖国はいけない、平成の開国だ、このままでは世界の孤児になる。

などという、一見ドキッとする「うまいフレーズ」にごまかされて、論点がすり替えられてしまっている。

私たちは、こうした流れに抗うための備えをしなければならないのです。

同じような手法は、経済ニュースのあらゆるところで起きています。

デフレの原因は少子化だ、消費税の増税を真剣に考えなければならない。

日本には公務員や道路が多すぎる、公共投資はもうやめるべきだ。

円高で日本は破綻する、日本は輸出依存度が高い、日本の輸出の根幹は自動車や電機などの耐久消費財だ。

為替介人をもっとするべきだ、このまま「借金」を続けていけば日本は破綻する。

このままではやがて日本にハイパーインフレが起きる、日本経済は中国に依存している……などなど。

思いつくまま列挙したこれらの最近よく耳にする「ありがち」なフレーズは、私に言わせればすべて誤解であり、もっと言ってしまえば真っ赤なウソです。


日本の大復活はここから始まる 三橋貴明著 小学館刊 2011-05-17



TPP
に参加してはいけない

グローバリズムも、構造改革主義の一種です。

TPP
も、当然その流れに乗った枠組みである。

TPPはとどのつまり、アメリカが日木に農産物や金融サービス、法律サービスなどを売り込みたいだけのスキームとしか思えないのです。

そうした分野の供給能力をアメリカが国内で消化しきれないために、日本の需要を狙っている。

TPP問題について、「日本は鎖国している」とか、「TPPは平成の開国、第三の開国」などといったイメージで捉えるのはやめるべきです。

将来の日本をどうしたいのかというデザインもないままに、開国などという、幕末の志士気取りのフレーズだけで、日本を金融バブルの元凶である投資銀行や、加入者よりも株主ばかりを重視する保険会社の草刈り場にしてはいけない。

たった数日間の裁判で何億円もの懲罰的賠償金が課せられるような訴訟社会にしてもいいのだろうか(そもそも幕末に開国をしたのは江戸幕府であり、志士たちではない)。

TPPに参加すれば、2015年までに、サービスを含めたあらゆる分野を自由化しなければならなくなる可能性があるのです。

TPP参加国、及び参加検討国のGDPシェア(2009

アメリカ66.7%、日本23.7%、豪州5.4%、マレーシア0.9%、シンガボール0.9%、チリ0.8%、ベルー0.6%、ニュージーランド0.6%、ベトナム0.5%

アメリカがTPPに参加しても、もし日本が入っていなければ、いったいどこにモノやサービスを売ればいいのかという話になってしまう。

裏を返せば、日本がTPPに参加したところで、まともな輸出先はアメリカしかないのです。

しかし、自動車などはすでにさんざん現地生産しているし、輸出全体で見ると、日本はいまでも十分競争力を発揮して貿易黒字を稼いでいるのです。

TPPへの参加でわずかな関税の負担がなくなることには、ほとんど意味がありません。

負担が減ることには違いないが、それは為替レートの変動で相殺されてしまうほどのわずかなものでしかないのです。

あるいは逆に、少し円安になれば、関税撤廃以上のメリットを輸出企業は受けることになります。

要するに、日本にはTPPに参加するメリットはないのです。

それに対し、アメリカにはメリットだらけです。

かつて、金融自由化でハゲタカファンドが席巻したように、農産物やサービスが再び日本に一方的に押し寄せてくるだろう。

アメリカにとっては、日本市場以外にはなんの魅力も感じていないはずです。

TPPは完全に、構造改革やグローバリズム、それに新自由主義といった流れを受けた、アメリカのしたたかな戦略のひとつなのです。

私は別に反米主義でもなんでもない。

むしろ、アメリカの戦略的な思考に感嘆しています。

日本が内需を拡大し、その結果としてアメリカから、例えば農産物の輸入が増えたというのなら何の問題もありません。

しかしアメリカは、事実は決して表に出さず、「日本の農業は保護主義である」とわざと的を外した主張を叫び、むしろ自国のサービスの輸出を目論んでいるのです。

気がつくと、刑事裁判にはすでにアメリカ流の裁判員制度が導入されています。

この流れがやがて民事裁判にも広がらないと、誰が言い切れるのだろうか。

未承認薬の投与や先進医療、選定医療の保険診療との併用など、混合医療もすでに始まっている。

アメリカ企業が日本でサービス事業を拡大するために、着々と布石は打たれている。

そのうちアメリカが「なぜ日本の健康保険は公的なものしか許されないのか。

民間や外資にも開放するべきだ」と言い出したとき、政府や世論はどう対応するつもりなのだろうか。

さらに間題なのは、アメリカ側ではなく、日本側、とりわけ現在の民主一党政権が、アメリカの主張を受けて、「ごもっとも、TPP参加は平成の開国だ!」などと言い出していることです。

あまつさえ「平成の開国か、このまま鎖国を続けるか」などという論点に仕立て上げ、選挙に持ち込みかねないという、政治的、経済的、そして国際的センスの欠如である。

開国か鎖国かと言われれば、多くの人が開国したほうがいいと考えるだろう。

というより、鎖国をやめるという言い方に反対はしづらい。

だがそれは、故意に本質を外した、一種の言葉遊びです。

私が個人的に一番恐れているのは医療サービスです。

国民健康保険がないアメリ力では、民間の医療保険に入らなければなりません。

保険会社は当然のように株主重視、利益重視の経営をしています。

つまり、できるだけ保険料を多く集め、できるだけ支払わなくて済むように様々な条件をつけてくる。

日本人には悪い冗談としか思えないが、歯医者は一生に四回しか保険が適用されない、盲腸は一日で退院しなければならないといった条件がつくなど、非道なやり方がまかり通っている。

私たち日本人は、保険料さえ支払っていれば、余程のことがない限り、誰でも安心して医療サービスを受けることができる社会を築いてきた。

というより、そうした分野で利益を出そうとする体質自体、私たちには到底受け人れがたいものです。

世界から見れば奇跡のような日本の健康保険制度を、「平成の開国」などというウケ狙いのキーワードのために危機にさらしてもいいのだろうか。

少なくとも、そうした論点にスポットを当てた議論を経た上で、考えるべきではないでしょうか。

こうした問題は、ほぼすべて経済に関する無知や誤解、そしてそれにつけ込んだ経済ニュースのウソやミスリードに端を発している。

TPPに関してどのような報道がなされているか。

「農業を守るか、輸出企業のために関税を撤廃するか」のみである。そもそも、そういう問題ではないのです。

ある新聞は、日本の農業の改革について、もはや自助努力では解決しないとさじを投げた上で、アメリカから農産物が押し寄せてくるというきっかけがあって、はじめて日本の農業の生産性向ヒが期待できるなどと、暴論を掲げる始末です。

恐らく、これを書いた記者は、TPPによって日本人にはなじまないサービスが入ってくる可能性があること自体を知らないのだ。

その割に、ほとんどの新聞は
TPP賛成の論調であるのが恐ろしい。

農業は、人間が生きていく根幹となる食の間題です。

やはり、他分野の製品とは違った議論をするべきです。

日本の農業に間題があるのは確かだが、それは
TPPとは別次元の話であって、個別に解決すれば済むことである。

農業を潰してしまっては、どうにもならない。

前年まで日本に輸出しまくっていた農業国で、たまたま次の年に災害が起き、供給能力が著しく下がったとしたら、その国は日本に食糧を売れなくなる。

自分たちが飢えるのに、わざわざ他国に売るはずがない。

供給不足によるインフレ、それも食糧については、決して起こしてはならない。

さらに、耕すことをやめ、一度荒廃してしまった農地は、簡単に元には戻せない。土は生き物だからです。

農業の構造改革を進めるべきだというと、ほとんどの納税者は賛成する。

日本の農業の生産性が低いことは周知の事実で、戸別所得補償制度など農家への財政支出はバラマキという批判が強いのです。

アメリカは当然、こうした日本の世論を把握している。だからこそ、そこを突いてくるのです。

日本の大復活はここから始まる 三橋貴明著 小学館刊 2011-05-17


デフレのメカニズムとその問題点


デフレーション(デフレ)とは、継続的な物価の下落のことです。

デフレは、需要が不足し、供給が過剰になる状態が続くことによって起こります。

インフレーション(インフレ)はデフレとは反対に、物価が継続的に上昇することです。

インフレの原因は、需要が過剰で、供給が不足する状態が持続することです。

デフレとは、物の値段が安くなることなので、消費者にとっては、一見、よいことであるかのように見えます。

しかし、実際には、デフレとは、恐ろしい経済の病気なのです。

なぜなら、デフレは、経済を動かしている原動力である投資を抑制するからです。

デフレは、次のようにして投資を抑制します。

まず、デフレすなわち物価の下落とは、同じお金で多くの物が買えるようになることですから、お金の価値が上昇することを意味します。

ですから、今、支出するよりも、しばらくの間、現金を保有していた方が、将来においてより得になります。

また、今、借金をすると、将来、返済するときに負担がより重くなります。

このため、企業は借金をして将来のために支出するよりも、今は支出を控えて、むしろ負債を減らそうとします。

企業は、一般的に銀行からお金を借りて投資を行います。

ところがデフレになると、企業は「今、銀行からお金を借りて投資をすることは得策ではない」と考えるようになります。

その結果、投資は減退します。

投資の減退は需要を縮小させるので、物価はさらに下落していきます。

こうして発生した悪循環が、持続的な物価下落すなわちデフレです。

ここで注意すべきは、デフレが、経済合理的な行動の結果として起きているということです。

デフレでお金の価値が上昇している間は、負債を減らし、投資を抑制するという行動は、企業経営上の合理的な判断です。

そのため、これを覆して企業に投資を増やさせ、経済を成長させるためには、企業に無理に非合理的な経営判断をさせるのでなければ、貨幣価値の下落(インフレ)を起こさなければなりません。

ビジネス雑誌などを読んでいると、「企業が単純なコスト削減や安値競争に終始し、リスクを負って新規事業や新商品の開拓に乗り出さないから、デフレから脱出できないのだ」といったような議論を見かけることがあります。

しかし、企業が新規市場の開拓に及び腰になっているのは、デフレの原因ではなく、その結果と見るべきでしょう。

デフレという異常なマクロ経済環境にあるときには、経営のやり方や気持ちのもち方をどうのこうの言っても、仕方がないのです。

元気が出れば何でもできるか

「自分が若いころと違って、最近の若者は内向きで元気がない。

外に打って出ようとしない」と言って嘆く声をよく耳にします。

そういう声は、年配の方に多いようです。

そういうお説教を聞くと、私は思わず、こう言い返したくなります。

「あなたが若くて、元気よく外に打って出ていたころは、デフレ不況ではなかったでしょう。

むしろ、バブル真っ盛りだったんじゃないですか。

バブル景気だったら、誰だって元気よく外に打って出られますよ」。

そういえば、「最近の若者の自動車離れ」といった話もよく聞きますが、投資だけではなく、消費の減退もデフレとは無関係ではありません。

例えば住宅や自動車など、ローンを組む大型の消費があります。

デフレでお金の価値が上がっている間は、ローンによる消費支出は手控えざるを得ないでしょう。

特に、消費者がローンを組んで消費をする習慣のあるアメリカでは、デフレは深刻な消費減退を引き起こすことになる恐れが非常に高いと思われます。

また、投資の減退によって経済が低迷し、賃金が伸び悩んだり、失業者が増えたりすれば、消費需要も後退していくでしょう。

デフレになって投資や消費を手控えるようになるのは、企業や消費者の経済合理的な判断によるものです。

このため、いったんデフレの悪循環が発生し始めると、もはや民間の努力だけでは、この悪循環から脱出することはできなくなります。

そこで、政府の景気対策が不可欠になります。

政府の景気対策のひとつに金融緩和政策があります。これは、企業の資金調達が楽になるように、お金をたくさん供給する政策です。

しかし、デフレになると、金融緩和政策だけでは、不況を克服できなくなります。

なぜなら、デフレ下では、企業も消費者も銀行からお金を借りなくなります。

そうなると、いくら中央銀行が貨幣を供給しても、資金需要がないので、貨幣は銀行や企業の中に貯蓄されるだけです。

先ほどの図5で、2001年から2007年にかけて企業部門の貯蓄が増えていることを示しました。

これは、デフレのせいです。

デフレから脱出するためには、お金をばらまくだけではダメです。

あくまでお金を使う需要を創造しなければなりません。

しかし、デフレの中での投資の抑制は、企業の経済合理的な判断の結果ですから、もはや民間だけの力では、需要を創造することはできません。

そこで、
政府が巨大な需要を創造する必要があります。

これが
公共投資です。

1929年、ニューヨーク株式市場の暴落をきっかけに深刻なデフレが発生しました。

世界恐慌です。このとき、アメリカのルーズベルト大統領は、ニューディール政策によって巨額の公共投資を行い、デフレを四年で食い止めました。

その後、1998年に日本がデフレに陥るまで、世界でデフレを経験した国はありませんでした。

それは、デフレが、深刻な経済の病気であり、経済運営上、絶対に避けなければならない現象のひとつだからです。

ところが日本は、もう10年以上もの間、デフレから脱出できないでいるのです。

戦後、どの国の政府も、バブルがはじけてデフレが起きそうになると、金融緩和と同時に財政出動を行い、デフレを未然に防いできました。

このデフレと財政出動の問題については、第4章で、もう一度くわしく論じます。

いずれにしても、デフレこそが、日本経済の長期停滞の最大の原因なのです。

日本人が、内向きで元気がないから、停滞しているのではありません。そんな単純な精神論の問題ではないのです。

日本人がいくら外を向いて元気を出しても、デフレから脱却することはできません。

元気が出れば何でもできるのは、私の知る限り、アントニオ猪木だけです。

貿易自由化はデフレを悪化させる

さて、日本経済が患っている深刻な病気であるデフレですが、貿易自由化は、恐ろしいことに、このデフレという病状を悪化させてしまうのです。

自由貿易のメリットのひとつは、国内外の競争の激化によって、あるいは安価な製品の翰入によって、製品が安くなり、消費者が恩恵をこうむるという点にあります。

これについては、異論はないと思われます。

しかし、デフレに悩んでいる経済においては、安価な製品の輸入は望ましいものではありません。

それどころか、デフレを促進してしまうのです。

TPPによる貿易自由化により、日本の農業が被害をこうむるのではないかと懸念されています。

しかし、アメリカからの安価な農産物の流入によって、打撃をこうむるのは農家だけではありません。

食料品の物価が下落することによってデフレが進み、経済全体が打撃をこうむるのです。

貿易自由化によるデフレの促進は、次のような経路で起こります。

まず、安い製品が輸入されると、競合する国産品が淘汰され、国内雇用が失われます。

例えば、国産米や国産牛が安価なアメリカ産米やアメリカ産牛との競争で駆逐され、コメ農家や畜産農家の多くが失業します。

さらに、例えば牛丼がより安価になれば、牛丼と競合する他の外食産業は人件費のカットで対抗するため、雇用を削減せざるを得なくなります。

農家や食品関違産業で失業者が増えれば、労働市場全体が供給過剰になりますから、実質賃金が一段と下がってしまいます。

こうして、デ7レが悪化するのです。このメカニズムは、次のようにも言いかえられます。

デフレとは、需要不足が続くことですので、これを止めるには需要を追加するか、供給を削減する必要があります。

ですが貿易自由化により、国産品が輸入品に代替されると、需要側では、国産品関連の雇用が奪われ、内需が縮小します。

他方、供給側を見ると、貿易自由化による競争の激化で生産性が上昇し供給が増加します。

こうして貿易自由化は、需要不足と供給過剰を深刻化し、デフレを悪化させることになります。

農産品の輸入の自由化は、農家だけの問題ではありません。

デフレに陥っている日本経済全体の問題なのです。

農産品輸入自由化がもたらす4重のデフレ効

しかも、リーマン・ショック後の世界大不況において、アメリカからの農産品の輸入自由化がデフレを引き起こすメカニズムは、少なくとも4つ考えられます。

第1に、関税の撤廃による価格の低下です。

第2に、安価に生産されるアメリカの農産品の輸入による価格の低下です。

第3に、ドル安でさらに安くなったアメリカの農産品の輸入による価格の低下です。

第4に、深刻な不況に突入して賃金が上がらなくなり、相対的に安上がりになったアメリカの製品を輸入することによる価格の低下です。

これは、言わばアメリカからデフレを輸入するような意味をもちます。

この4つの効果が相乗するので、アメリカの農産品は極端に安価になって日本市場になだれ込み、デフレを深刻化させることになるのです。

貿易自由化は、自国がデフレ不況にあるときには、やってはいけないのです。

まして、貿易相手国もデフレ不況になる、あるいはその恐れがあるようなときには、なおさら、やってはいけません。

農業構造改革はデフレを悪化させるだけ

「アメリカの農産物は価格こそ安いかもしれないが、日本の農産物は品質や安全性の面で優れている。

だから、国産の農産物の値段が多少高くても、買ってくれる消費者はいるのではないか」たまに、このような意見を聞くことがあります。

確かに、国産の農産物には、その付加価値の高さによって、アメリカ産との差別化を図っているものがあります。

しかし、デフレが深刻化して、国民所得が低下していけば、高付加価値の国産農産物の需要は確実に縮小します。

デフレにある経済では、付加価値の高さでは生き残れないのです。

また、TPP賛成派の論者の中には、「日本の農業は、構造改革によって体質を強化し、農産品の輸入が自由化されても生き残れるように生産性を向上すべきだ」と主張する人が少なくありません。

確かに、日本の農業には解決すべき構造的な課題が数多くあるようです。

こうした論者の提案する改革案には、傾聴に値するものも少なくないでしょう。

しかし、世界不況にある中では、アメリカの農産品は、先ほどの4重の効果によって、極端に安くなっています。

それでも、構造改革によって日本の農業が生き残れるという見込みは、本当にあるのでしょうか。

そんなすごい構造改革を思いつくような天才的な頭脳があるのならば、欧米の関税があっても韓国に勝てる製造業を作るのに使った方が、よほど簡単なのではないでしょうか。

仮に、そんなすごい農業構造改革が、本当に成功したとしましょう。

それならば、確かに日本の農業は、TPPに参加しても生き残ることができるかもしれません。

しかし、日本の農業は守れても、安価な農作物の輸入によるデフレ効果を防ぐことはできません。

それどころか、日本の農業が、構造改革によって生産性を向上させ、安い農作物を出荷できるようになったら、それだけでも、食料価格が下がり、デフレが進んでしまいます。

そもそも、構造改革とは、デフレを促進する政策なのです。

構造改革とは、規制緩和、自由化、民営化、緊縮財政などによって市場への新規参入者を増やし、自由競争を促して、産業の生産性を向上させようという政策です。

こうした政策は、1970年代終わりから1980年代にかけて、アメリカのレーガン大統領やイギリスのサッチャー首相が推進しました。

いわゆる新自由主義という理念に基づく政策です。

1990年代以降の日本の構造改革も、こうした理念を踏襲したものです。

しかし、レーガン大統領やサッチャー首相が、当時、直面していた問題はデフレではありませんでした。

その反対のインフレだったのです。

当時の英米は、物価の上昇に苦しんでいました。そこで、両国政府は、規制緩和や自由化によって市場の競争を促進し、企業の生産性を向上させることによって、物価を下落させようとしたのです。

つまり、インフレを退治するために、政策的にデフレを引き起こそうとしたのです。

これが、レーガン大統領やサッチャー首相の新自由主義の基本理念でした。

ところが、日本は1990年代、バブル崩壊後の不況で、デフレを心配しなければならない状況にあったにもかかわらず、新自由主義的な構造改革を断行しました。

その結果、今日に至るまで10年以上もデフレから脱却できないという事態に陥ってしまいました。

デフレになりそうなときに、デフレ政策を実施したのだから当然です。

戦後の経済運営の歴史上、こんな初歩的なミスを犯した国はほかにありませんでした。

だから、戦後、日本以外にデフレを経験した国がなかったのです。

構造改革は、生産性の向上を目指すものです。

しかし、生産性の向上は、いつも良いことであるとは限りません。

生産性の向上は物価の下落をもたらすので、インフレのときはよいのですが、デフレのときには、かえって景気を悪化させるのです。

デフレのときは、溝造改革はご法度です。


「TPP亡国論」中野 剛著集英社新書2011-12-19






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