ラマヌジャン(RAMANUJAN-1887〜1920)
円周率の公式 南インドの天才数学者


ラマヌジャンの円周率の公式(1914年発表)

チュドノフスキーの公式(ラマヌジャン公式をチューンアップした高速π計算公式)

ポールウェイン兄弟による公式




ラマヌジャン公式は円周率計算の歴史の中でも特異な存在でした。

証明されていない公式でしたが、ひとたび計算すると、3・14159265……と正しい円周率の値が出てくるのです。

この公式の驚くべき点は、そのスピードにあります。

「スピード」とは計算結果から円周率が現れる速さのことです。

驚異のスピードでπが出現します。

ライプニッツによる円周率の公式は、スピードがとても遅い公式です。

つまり、いくら計算しても3・1415……がなかなか現れてはこないのです。

しかし、先ほどのラマヌジャンの公式は、なんと級数(無限個の足し算)のはじめの二項を足し算しただけで、3・14159265まで正確な値がはじき出されてきます。

ラマヌジャンは円周率探査の歴史を変えたのです。

ラマヌジャン公式は、ラマヌジャンがこの世を去ってからその威力を見せ始めました。

1987年ジョナサン・ボールウェインとピーター・ボールウェインの兄弟の手により、その証明がされたのです。

「ゼータ関数の”奇跡”」という見出しで始まる証明の中で、彼らはラマヌジャンの公式がどこからやってきたのかを説明してみせました。ラマヌジャンは生涯のテーマとしたのがゼータ関数でした。

その理論を使ってボールウェイン兄弟が導き出した公式です。

実はボールウェイン兄弟による証明がなされる2年前の1985年、アメリカの数学者、プログラマーのビル・ゴスパー(本名ラルフーウィリアム・ゴスパー、1943〜)は当時世界記録となる1752万6200桁の円周率を、「ラマヌジャン公式」を使ってはじき出すことに成功していました。

最初の100桁部分が一致していることにゴスパーはこの公式が円周率を表すことを確信します。

しかし、当時ラマヌジャン公式が本当にπを表す式なのかわからなかったので、ゴスパーの結果の真偽をつけることができませんでした。

しかし、ボールウェイン兄弟による証明がなされたのをきっかけに、πの計算は一気に"億"の時代へと突入していくことになります。

それが東京大学の金田康正チームと、πを計算するために旧ソ連からアメリカに渡ったチュドノフスキー兄弟による激しい円周率計算競争でした。

東京大学は世界最新のスーパーコンピュータを駆値して、一方のチュドノフスキー兄弟は自作の電子計算機を用いての前代未聞のπ計算競争です。

1987年、金田チームがπ計算の歴史上はじめて小数点以下1億桁超えを達成すると、1989年6月にチュドノフスキー兄弟は5億3537万9270桁を計算。

すると、1カ月後の七月に金田チームは5億3687万898桁を計界して抜き返しました。

翌八月には、チュドノフスキー兄弟は10億桁超えを達成します。

その際に彼らが電子計埠にプログラミングしたのが、証明がなされたぱかりのラマヌジャン公式でした。

現代になってようやくその威力が開花したのです。

さらに1994年、チュドノフスキー兄弟が40億4400万桁と世界記録を更新しました。

その際、自作の電子計算機にブログラミングされていたのが、チュドノフスキー公式です。

これはラマヌジャン公式をチューンアップした高速π計算公式です。

◆チュドノフスキー公式

ラマヌジャン公式は1回計算するごとに8桁ほど精度が上がっていくのに対して、チュドノフスキー公式は14桁ほど精度が上がっていきます。

このチュドノフスキー公式の威力は、電子計算機の性能が上がれば上がるほど証明されることになりました。

2011年、会社員の近藤茂氏がチュドノフスキー公式を使って、10兆桁のギネス記録を打ち立てました。

自宅の電子計算機を動かし続け、計算に成功したのです。

1920年に32歳の若さでこの世を去ったラマヌジャン。

しかし、ラマヌジャン公式は国境を越え、時代を超えて今なお 生き続けています。

それこそがボールウェイン兄弟がいった 奇跡 なのかもしれません。

ラマヌゾヤンの発見した公式は、彼がいなかったら100年経った今て も誰も発見していないと思います。

数学や自然科学の発見には、理論的な必然性があります。

しかし、ラマヌジャンが なぜそれを思いついたのか!誰にもわかりません。

1920年4月26日、ラマヌジャンは32年の生涯を閉じ、同時に計算の旅も終えたのです。

彼が残したものは3254個の公式が書かれたノートと、部屋に散乱した計算用紙でした。

出所:面白くて眠れなく数学者たち 桜井進著 株式会社PHP研究所





070730 朝日朝刊(東京12版)14ページ科学面

天才数学者ラマヌジャンが残した公式「擬ゼータ関数関数」謎の正体に迫る

20世紀初め、南インドに彗星のように現れ、32歳で夭逝した天才数学者シュリニバーサ・ラマヌジャン(1887〜1920)。

彼の残した最大の謎「モックゼータ関数(擬ゼータ関数)関数」が、日系の米大教授らによって数学的に位置づけられた。

宇宙の根源を探る科学とかかわるのではないかともいわれ、自然界との接点発見が待ち望まれている。(上田俊英=ワシントン、小林哲)

「インドの魔術師」ほぼ独学で導く

ラマヌジャンは、数学史上でも極めて異質な天才とされる。

南インドの貧しい家に育ち、数学はほぼ独学。

港湾局に勤めながら、3冊のノートに一流の数学者も思いつかないような公式を3千以上も書き残した。

無限に続く和の形で表される数式「無限級数」が得意で、複雑な式を自在に操って美しい公式を導き、後に「インドの魔術師」と呼ばれた。

1913年、「1+2+3+4+…」と無限に足した答えを「マイナス12分の1」と記した手紙を英ケンブリッジ大の数学者ハーディーに出す。

数学の巨人オイラーが「ゼータ関数」という特殊な関数を使って導き出したのと同じ答えに、独力でたどり着いていた。

「天才」と直感したハーディーの招きで翌14年、英国に渡り、才能が花開いた。

ゼータ関数は、現代物理学の素粒子論などとも密接にかかわる。

黒川重信・東京工業大教授(数論)によると、ゼータ関数の「概念の拡大」がラマヌジャンの最大の業績の一つ。

それまでのゼータ関数が「平屋」であるとすれば、類縁の「2階建て」関数があることを見つけたのだという。

「2階建てであるとわかれば、3階建て、4階建てもあると思いつく。

ゼータ関数の世界が一気に広がった」

藤原正彦・お茶の水女子大教授(数論)は「何の脈略もないところから驚異的な数式が出てくる。

凡人の理解をはるかに超えており腹が立つほど。

アインシュタインがいなくても相対性理論は発見されただろうが、ラマヌジャンがいなければ彼の公式の大半は今も見つかっていないだろう」という。

数学的位置づけ 日系教授ら成功

ラマヌジャンが最後に研究に打ち込んだのが、「擬ゼータ関数関数」だ。

オイラーの研究に端を発し、ドイツの数学者ヤコビが発展させた「ゼータ関数関数」と共通点があると考えての命名だった。

死の3ヶ月前の20年1月、擬ゼータ関数関数について17個の公式を記した手紙をハーディーに送り、その手紙がその後、80年余も世界の数学者を悩ませてきた。

どうやってこれらの公式を発見したのか。各公式の意味は。そもそも擬ゼータ関数関数とは何か。

手がかりは何一つ記されていなかった。

転機は2002年に訪れた。

オランダの数学者ズウェガースが、ラマヌジャンの公式が「マースの保系型形式」と呼ばれる数学の特殊な形式と関係があると気づいた。

それを手がかりに解明に挑んだのが、米ウィンスコンシン大マディソン校のケン・オノ教授(39)とカトリン・ブリングマン研究員(29)。

2005年7月、移動の機中で、謎解きの道筋がひらめいたという。

2人は擬ゼータ関数関数全体を表す「一つの公式」を導き出し、今年2月、米科学アカデミー紀要(電子版)に論文を発表した。

成果について、桂田昌紀・慶応大教授(解析的数論)は「時代を超越した天才の仕事が、ようやく理解できるようになってきた。

天才による発見を解釈し、位置づけることで、現代数学は発展してきた」と評価する。

擬ゼータ関数関数の正体に迫る研究がどれほど難しかったか。

「地球に2分間立ち寄った宇宙人がヘビとフンコロガシに出あい、この2種類の生物から地球の生物の全体像を想像するようなものだった」と、オノさんは表現する。

テータ関数は現代物理学の「超ひも理論」で重要な役割を担うなど、数学以外の自然科学の研究にも欠かせない。

擬ゼータ関数関数も同様の秘密があるのではないか。

「擬テータ関数は(自然界の力を統一して記述する)大統一理論発見へのヒントを与えてくれている」。

1987年、ラマヌジャン生誕100年の記念会議で、米国の物理学者フリーマン・ダイソンは語った。

最近では宇宙の膨張エネルギーとの関係もささやかれている。

オノさんの父親で数学者の小野孝さん(現ジョンズホプキンズ大教授)ら世界の数学者が記事にこたえ、募金で胸像を贈った。

そして1984年、ジャーナキさんから孝さんに感謝の手紙が届いた。

「ラマヌジャンって、だれ」。15歳のオノさんが問いかけ、すべては始まった。

オノさんとラマヌジャンには、因縁がある。

生誕百年を前にラマヌジャンの関心が世界的に高まっていたころ、わずか9歳で結婚し、彼の死後60年以上も生活苦にあえいだ妻ジャーナキさんが「夫の栄誉をたたえて銅像を建ててくれると言ったけど、どこにあるの」と、周囲の無理解さをインド紙上で訴えた。


出所:ラマヌジャン「擬ゼータ関数」 作成日時 : 2007/11/24 01:08  ブログ気持玉 21




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